兵庫県内の企業と大学生の就職マッチングを様々な事業を通して行う『Mラボ』の中核事業『課題解決ラボ』(兵庫県、神戸新聞社主催)のWEB発表会をホームページ上にて行いました。県内企業が抱える様々な経営課題を、大学生がゼミの専門性をいかし、学生の視点で解決を目指す事業です。今年度は、新型コロナウィルス感染症による影響により、5社10チームの縮小開催となり、各ゼミ・企業との意見交換やヒアリングは、非対面方式(オンライン会議システム・メール・電話など)での情報のやり取りをルールとするなど、例年とは異なる運営方法で開催いたしました。結果は、以下の通りとなります。
甲南女子大学・佐伯ゼミ(研究企業:菊正宗酒造) 研究テーマ:学校に対する教育プログラムの提供を通じたブランド価値向上策の提案 |
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立命館大学・西岡ゼミ(研究企業:マルヤナギ小倉屋) 研究テーマ:若者に日本の伝統食文化を |
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関西学院大学・西本ゼミ(研究企業:菊正宗酒造) 研究テーマ:恋しとー?プロジェクト |
審査委員長 | 神戸大学大学院経営学研究科 教授 南 知惠子 |
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各審査委員コメント
詳しく見る Open or Close クロシェホールディングス/関西大学・西岡ゼミへのコメント
委員B
COVID19により私たちは自分たちにとって本当に大事なことは何かを考えさせられ、サステナビリティを本気で考えようとし始めているように感じます。
そのような社会の気配をいち早く察知して、ファッションとサステナビリティを関連づけられる方策を研究し、コンセプトづくりに取り組まれたことを高く評価します。
改善ではなくイノベーション(世の中に新しい概念を生むこと)で課題解決を目指す西岡ゼミは異色のチャレンジャーだと考えます。
委員D
サステナビリティやそれに関わることがらを用いて消費者に実際の購買やサービス参加を促すことは難しいという意見があります。しかし西岡ゼミの研究では,多くのデータを収集したうえで,ある消費者集団に絞るとそうではないということを示していることや,ポジティブなメッセージを発信することが重要であるということを発見していることを,非常にポジティブに評価することができました。また,サステナビリティやそれに関わるビジネス施策は消費者が参加しないことには始まらないことであり,サステナブル行動を行うこととファッショナブルという性質を結びつけ,参加のきっかけとする提案は,時間はかかるけれども実現していくだろうと考えました。
クロシェホールディングス/関西学院大学・安ゼミへのコメント
委員F
コロナ禍でアパレル業界の不振が言われていますが、消費者が店頭に購入しにいかなくなってきたことにより浮彫になったのは、アパレル業界の大量生産と在庫問題です。サステナビリティの問題として課題を設定し、古着を販売することを着想したこと、また古着が若者にどのように受け入れられているのか調査をし、また若者の感性で古着のコーディネート提案をしつつ、ネット販売を提案したこと、また古着回収箱を設置して、共有体制や加工、販売体制を企画して提案したことはとても評価に値すると思います。もう少し考えてほしかった点は、古着販売のみを行っていると新しい製品が売れなくなる可能性があります。クロシェホールディングスは企業としてどのようなビジネスモデルで勝負すべきか新しい製品の企画製造販売と古着自体をどう両立させるのか考えてみるとより良い課題解決提案になったのではと思います。
大和出版印刷/関西大学・千葉ゼミへのコメント
委員A
・このチームの問題意識は、共感が持てました。課題を確定させるまでのプロセスがよく考えられたものになっている点、提案内容の新規性が高い点、コンセプトテストを ちゃんと行なっている点(分析内容自体にはちょっと不満が残りますが)、を 高く評価したいと思います。
・一方で、提案内容に関して、(個人情報漏洩や犯罪利用など)セキュリティの問題を検討していないこと、これを大和出版印刷さんがどう収益化するのかが十分に検討されていないこと、といった点が物足りなかったところです。
大和出版印刷/武庫川女子大学・赤岡ゼミへのコメント
委員E
企業業績に影響を与えそうなインパクトを持つかどうかという視点で見たときにこのチームの提案は最も可能性を秘めていると思いました。400-1000円/月、数万人の継続顧客、高利益率のサブスクリプションビジネスとして成立する可能性は十分にあると思います。
それともう1点、出版文具という新しい領域を創設したことで、たとえ今回のアイデアが失敗したとしても、次なるアイデアを生み出す起点をつくっていることも他のチームにはない素晴らしい点だと思います。
アイフォンを作りたいのか。それとも、世界を変えるという起点のもとにアイフォンという手段を今は用いるのか。今回はどのチームも残念ながら深い社会洞察がありませんでしたが、アイデアではなく、アイデアの起点を企業意志や社会洞察から規定できると変化の激しい時代に対応しやすくなるのではと思います。
マルヤナギ小倉屋/甲南大学・西村ゼミへのコメント
委員A
・動画でのプレゼンという点に関して、とてもよく出来ていると感じます。具体的には、スライドの見やすさ、(アニメーションも含めた)テンポのよいスライド展開、商品シーンを実演動画で説明したこと、などです。ただ、動画の編集にちょっと雑なところがあるかなというのが残念な点でした(冒頭30秒くらいのところで説明が重複していること、最後の参考資料紹介の箇所で音声が重なってしまっていること、プレゼンターによって音声レベルがまちまちなこと、など)。
・アンケート、インタビュー、店頭調査など多様な調査活動を実施し、それをふまえた提案になっているという点で、しっかりした企画活動になっていることを評価します。
・基本的に既存の商品を活用している提案ということで、実現可能性も高いと考えます。
・欲を言えば、3種類のセットそれぞれのレシピ提案も欲しかったです。子供でも作りやすい、時短になる、栄養はもちろん味も良い、ということがポイントかと思いますが、そんな都合のよいメニューとしてどんなものがあるのか、ということが示されていないので、その点でのこの商品の実現可能性に不安を感じてしまいました。
六甲バター/関西大学・荒木ゼミへのコメント
委員C
当社の課題であるシニア層の開拓について、ターゲットを細分化した上でその行動特性をしっかり捉え、コロナ禍での意識変化や潜在ニーズを浮き彫りにし、これまで培った技術力(経営資源)を活かしてご当地チーズを開発するアプローチは納得感がある。また、シニアのAR利用の可能性に係る疑問も検証し、シニアの社会貢献意欲を観光地支援として売上の一部を還元する仕組みに繋げた点も素晴らしく、“ご当地”に掛けた「go to cheese」のネーミングも秀逸。
委員D
ターゲット消費者群が生活の中で何を楽しみにしているか(wants)という点と,しかしCOVID-19禍でそれが実現できないことを整理しつつ,ターゲット消費者群(アクティブシニア)でもQR決済を利用している人が増加しているというデータを用いて,今楽しむことができることとプロモーションを結びつけていることが,とてもポジティブに評価することができました。もちろん,なぜチーズなのか?という疑問は残りますが,”チーズを食べることによって健康を保ちながら,実際にVRで見たところに行って体験しよう”,などと結びつけることも可能だと思いました。
六甲バター/神戸学院大学・島永ゼミへのコメント
委員E
島永ゼミの発表は、健康意識が高まる中、チーズが健康によいというイメージがもたれていないというギャップを生かし、栄養機能性食品という機能性を冠したチーズドリンクを提供するというものでした。
チーズドリンクというアイデアとギャップを生かす視点はおもしろいですね!革新を起こす企業風土ともあっていそうです。健康という普遍的なニーズに、ネット上などですでに発生し始めている生活者の兆しを捉えるという構造も素晴らしいと思います。
ただ、アイデアはよいですが、具体的に生活者がこの飲料をなぜ利用するのか、なぜ数多くある栄養補助食品ではなくこれなのか、どのようなシーンに最適なのか、残念ながらイメージできませんでした。生活者課題や心理の深堀りがあれば、よりよくなったと思います。
離乳食としてまだ噛めない乳幼児用としてや、ウィダーインのように10秒チャージ食品にしたり、アクティブでない人をアクティブにするという名目で、六甲バターのチーズデザートを流動食しか食べられない人にも食べられるようにするなど、利用する必然と数多くある競合商品との差別性が明確であれば、よりアイデアが際立ったと思います。