中小企業と大学生の就職マッチングを様々な事業を通して行う『Mラボ』の中核事業『課題解決ラボ』(兵庫県、神戸新聞社主催)の公開プレゼン大会を、10月28日(土)、神戸ハーバーランドにて開催しました。
『課題解決ラボ』は、新商品開発やマーケティング戦略など中小企業が抱える様々な経営課題を、大学生がゼミの専門性をいかし、学生の視点で解決を目指す事業です。
製造業、サービス業など兵庫県内10企業から出された課題について、調査・研究を進めてきた11大学、20ゼミ、約230名の学生が20チームに分かれ研究成果を発表し、優秀チームを表彰しました。
甲南大学経営学部・西村ゼミ(研究企業:まねき食品)
「潜在顧客を獲得せよ!」
女性の「ほっとプレイス」提案
駅そばで知られるまねき食品だが、新たな事業の柱としてハンバーガーとバウムクーヘンの店「ハイミーカフェ」をJR姫路駅前のピオレ姫路で運営している。この「ハイミーカフェ」の活性化を考えた。アンケート結果をふまえ分析を行ったところ「ディナーの時間帯に集客は低いが、ピオレ内に仕事終わりの一人女性が多くいる」ことが分かった。夜の時間帯にピオレ姫路の客2800人を調べたところ女性が72%を占め、うち94.8%が一人客で20~40代の働く女性が大半を占めた。そこで「26歳女性。仕事でストレスを抱えるがお出かけが好き」というペルソナ(代表的な特徴を持った架空のユーザー)を想定した。ピオレ姫路に求める価値は、「仕事終わりに1人でほっとできる場所」。そこで「ハイミーカフェ」を家に次ぐ「第2のほっとプレイス」を提供できる場とし、「スイーツdeちょい飲み」を提案する。バウムクーヘンをアーモンドバターなど4種の熱々の味で楽しめる「お一人様フォンデュ」に、好きなお酒を3種類チョイスできるようにする。このようなメニューがあれば行きたいかヒアリングしたところ75%が「はい」と答えた。店が地下1階なのでデジタルサイネージで誘導するプロモーションが有効だと考える。
まねき食品株式会社・竹田典高専務取締役の話
今日のプレゼンは学生の気迫を感じた。学生がきっちりとした情報収集に基づく分析を行ったうえで、セグメントを定め、わかりやすく細かい提案になっていた。当社でも店の活性化策を考えたが詰めが甘く努力不足だったと感じる。冬場に向け暖かいメニューをと考えていたので提案を実現させたい。
ゼミ代表・林優花さんの話
ゼミ生22人全員のモチベーションが上がらない時期もあったが、途中からひとまとまりになることができた。現場を踏んで、現状を徹底的に調べることでペルソナがイメージでき「第2のほっとプレイス」というコンセプトこそ他店にはないハイミーカフェらしさになると思い、ストーリーを明確にすることができた。
関西学院大学商学部・川端ゼミ(研究企業:剣菱酒造)
「剣菱の未来を切り開く~蔵元と剣菱愛好家による共創イノベーション~」
ファン限定宴会を開催
街角アンケートで「剣菱」の認知度を尋ねたところ66%が「知らない」と答えた。飲んだことのない人に「500年間変わらぬ味を守り続けていること」などを伝えたところ65%が「飲んでみたい」と答えた。こだわりが知られていないギャップを埋めるべく、試験版ファンサイトとしてフェイスブックページを開設した。海外からもアクセスがあり、剣菱グッズが欲しいといった要望を集めることもできた。ただ、愛好家同士のリアルなコミュニティーをつくることができなかった。そこで、剣菱が置かれている飲食店でのファンサイト限定宴会を提案したい。飲食店との取り引き拡大も期待でき、そこで剣菱グッズを販売すれば愛好家の結束力向上にもつながり、マーケティング情報の収集もできる。
京都大学経済学部・若林ゼミ(研究企業:大月真珠)
「宝飾業界におけるBtoCマーケティング」
2ウェイ商品反応上々
大月真珠は真珠の養殖から販売まで一貫して手がけ、売上の85%を卸売事業が占める。
卸売事業を伸ばすには真珠市場を拡大する必要があると考えBtoC(消費者向け取り引き)のアプローチを考えた。そこで成人式を迎える娘に母からプレゼントする時を購入機会と捉え、髪飾りでネックレスにもなる2ウェイアクセサリーの商品化を提案。「一つのアクセ、2人の私」というキャッチフレーズを考えた。神戸の呉服店で、振袖を選ぶタイミングに販売する。継続的に真珠を買ってもらうためのファーストステップとして価格は3万円程度に抑えた。購買する母親の75%は「どうせ買うなら2ウェイ」がいいと回答。呉服店にもヒアリングしたところ「ぜひ置いてみたい」と好意的な反応が得られた。
甲南大学経営学部・奥野ゼミ(研究企業:吉田ピーナツ食品)
「B-CHIEF PROJECT」
チーフ育て組織活性化
会社の抱える問題を知るため、社員に対し働く上でのモチベーションなどについてアンケート調査をした。「将来管理職になりたいか」を尋ねたところ「なりたい」が20人、「なりたくない」が55人だった。職場環境に満足していない社員も多かった。そこで考えたプロジェクトが「B-CHIEF」。複数のチームをつくって目標設定をし、PDC(計画、実行、検証)のサイクルを回す。チームは部門を越えたメンバー構成とし、リーダーはくじ引きで決める。参加を促すためにメンバーにはパスを配布しインセンティブを設ける。組織が活性化し、コミュニケーションも活発になる。こうしてリーダーと社員をつなぐチーフを育てていくことで、働く上でのモチベーションも上がる。
審査委員長 |
神戸大学大学院経営学研究科 教授 南 知惠子 |
---|---|
神戸大学文学部を卒業後、ミシガン州立大学にて修士号、神戸大学にて博士号(商学)を取得。横浜市立大学商学部助教授を経て、2004年より現職。専門は流通・マーケティング論。日本生産性本部審議会等委員、日本版顧客満足度指数開発顧問等を歴任。サービス開発に関する企業との共同研究多数。主要著書は「リレーションシップ・マーケティング」(千倉書房、2005年)、「顧客リレーションシップ戦略」(有斐閣、2006年)『サービス・イノベーション-価値共創と新技術導入-』(有斐閣、2014年、西岡健一との共著)、『製造業のサービス化戦略』(中央経済社、西岡健一との共著)など。 |
審査委員 |
流通科学大学商学部 教授 清水 信年 |
---|---|
神戸大学経営学部卒業、同大学院経営学研究科博士課程修了、博士(商学)。奈良大学社会学部専任講師、流通科学大学商学部専任講師・准教授を経て2011年より現職。同年から、小売業での人材育成を目的として新設された商学部リテールマネジメントコース長を務める。専門はマーケティング論、製品開発論、リテール・マネジメント論。 |
審査委員 |
株式会社 神戸デジタル・ラボ 代表取締役 永吉 一郎 |
---|---|
1962年生まれ。広島大学卒業後、京セラ(株)光学機器事業部にてカメラ設計・海外工場における生産立上・商品企画を担当。1991年、神戸で広告会社を経営する父親が急病で倒れたため、急遽帰神し、代表取締役に就任。1995年阪神大震災を経験し、震災時のITの役割に気づき、同年KDLを創業。現在に至る。 |
審査委員 |
パナソニック株式会社 全社CTO室 濱崎 省吾 |
---|---|
九州大学大学院工学研究科修了。神戸大学大学院経営学研究科修了。1991年松下電器産業(株) (現パナソニック)に入社。本社R&D部門にてバーチャルリアリティ、コンピュータビジョンの技術開発を担当。2005年より米国Panasonic R&D Company of Americaへ出向し、パナソニックサンノゼ研究所の設立に従事(初代副所長)、パナソニックベンチャーグループ副所長を兼任。2008年に帰国し、現在は全社CTO室とコーポレート戦略本部を兼任、ベンチャー投資およびベンチャー企業との協業構築の業務を担当。 |
審査委員 |
株式会社NOTE 代表取締役 藤原 岳史 |
---|---|
2009年一般社団法人ノオト設立、理事に就任。2016年株式会社NOTEを設立し、代表取締役に就任。古民家(歴史的建築物)の活用を起点に、持続可能なビジネスとエリアマネジメントを実践。過疎化・空き家化が進む地方において、独自の改修・情報戦略・マーケティング・資金調達などのノウハウを駆使し地域活性化事業に取り組んでいる。 |
審査委員 |
神戸大学大学院経営学研究科 准教授 森村 文一 |
---|---|
立命館大学経済学部卒業、神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(商学)。京都産業大学経営学部助教を経て,2014年より現職。専門はマーケティング論、リテールマーケティング論,サービスマーケティング論、消費者行動論。主に顧客接点への技術導入と価値創造プロセスについての研究を行っており、製造企業および小売企業のマーケティング戦略立案や技術を基盤とした顧客接点のデザイン支援に携わる。 |
審査委員 |
未来教育設計 代表取締役(Mラボ課題解決ラボ実行委員) 吉住 裕子 |
---|---|
(株)住友銀行、(株)JDL、三喜産業(株)等に勤務したのち、1999年に独立し、2005年に(有)未来教育設計を設立。事業者・団体の新規事業立ち上げを、戦略立案・資金調達・人財育成面から支援し、その挑戦と進化を応援する中小企業診断士。また、地理的表示保護制度の近畿ブロック統括アドバイザーとして、地域の伝統的な産品を知的財産化してさらに価値を高める方策を伝えるなど、新しい観点からの地域づくりを支援中。 |