地方の企業や地方創生の取り組みに直接触れてもらうことで、地域の魅力を体感してもらう『地方が面白くなる大学ゼミ合宿』を8/25(火)~26日(水)の二日間にわたり、兵庫県篠山市にて実施しました。
今回は、地域再生、商店街再生、定住支援など地域のコミュニティ活性に関連する活動を多岐にわたって展開されているノオト様のご案内で、名古屋学院大学(商学部)濱ゼミ、関西大学(商学部)西岡ゼミの計19名が篠山の“いいとこ“を体験し、レポートにまとめました!
一般社団法人ノオト代表理事 金野 幸雄さん
人口減と高齢化が急激に進む中、限界集落はコスト面で維持できないので中心部に集約しろとの議論がある。血が巡らず壊死しかけた指先を、切除するのと同じ。都会の発想だ。私たちは指先を温めて、血を巡らせる。
空き家になった篠山の古民家を改装した宿泊施設「集落丸山」は、わずか5世帯の集落にある。こうした場所にこそ、都会で見失われた暮らしの豊かさがある。運営や朝食づくりは集落の人たちが担うことで仕事も生まれた。
古民家と言ってもトイレや風呂などは最新式にして無線LANも設置した。現代の生活に合わない点を我慢するのではなく、現代にも通じる集落や古民家の価値を知ってもらい、未来につなげるためだ。
山深くまで集落があるのは、さまざまな努力と工夫を重ねて人間が住み続けたから。いわば日本文化の多様性の証しといえる。
生物の多様性が重視される一方で、祖先が築き上げてきた文化の多様性は、失われてもいいのだろうか。
団体概要 |
一般社団法人ノオト 2009年設立。篠山市に本社を置き、市内の古民家活用やITを活用した地域振興事業、NPO支援や人材育成に取り組む。朝来市や豊岡市でも歴史的建築物を活用したホテルを展開。 |
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Webサイト | http://plus-note.jp/note/ |
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農事組合法人丹波たぶち農場 田渕 真也さん
建築関係の大学を卒業後、実家の農業を継いで2002年に法人を設立しました。当時は若者の就農は少なかったが、最近は農業のイメージがよくなり、うちでも若い人が増えています。
高齢化で耕し手が減り、もう10年もすれば篠山の農地の三分の一か四分の一は維持できなくなる。地域が荒廃してしまう。それを防ぐため、最近では地域と一緒になって、今後の農業を話し合っています。
農業には、仕事や産業としての側面と、地域を守るインフラとしての側面があります。農地を維持するにも、コストがかかる。法人としては利益を出す必要があるが、地域貢献も大事。そのバランスをどう取るかを、常に意識しています。
団体概要 |
たんばたぶちのうじょう 減農薬栽培したコメを消費者に直接販売。農業を志す若者を研修生として受け入れる。観光農園も経営。 |
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Webサイト | https://www.tabuchi-farm.jp/ |
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源右衛門窯 市野 太郎さん
丹波焼は日本六古窯(にほんろくこよう)の一つ。その火は800年以上、途絶えていません。
現在、60ほどの窯元があり、規模は小さくてもそれぞれ独自の販路を持っています。ずばぬけた大手があるわけじゃないから、不況の波にも強いですね。
昔は、ある程度年配の方が使うのを想定して、重くどっしりした花器類が作品の主流でしたが、最近はなんでもありですね(笑)。ぼくも若いお客さんを意識して、水玉模様をデザインに取り入れたりしています。
他の地域の窯元では後継者難という話も聞きますが、丹波ではどの蔵も若手ががんばっている。40年以上も前から「グループ窯」という集まりがあり、若手同士が連携しているのが強みと感じます。
団体概要 |
げんうえもんがま 120年前に作られ、現存では最古・最長の登り窯(兵庫県指定文化財)を保有。太郎さんは10代目。 |
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SORTE GLASS 関野 亮さん
高校を出てから吹きガラス工芸ひと筋。出身地の大阪で工房を探したのですが、いい物件がなく、ここを紹介されました。もともと倉庫でしたが、広さと、瓦屋根の雰囲気が気に入り、4年前から使っています。
このあたり(篠山市福住)は昔の宿場町だったためか、地域全体が移住者に対してウエルカム。自宅はすぐ近くの古民家ですが、夏でも夜はクーラーがいらず、住みやすい。それでいて、大阪の実家へは車で1時間ほど。ホームグラウンドに仕事場もある感じで、田舎とは思いません。
ガラス工芸には丹波焼のような地域性はありませんが、インターネットを使って篠山から世界へ、日本の良さを表すデザインを発信していきたいですね。
団体概要 |
そるてぐらす 関根さんが妻のゆうこさんと営む工房。グラスの脚に立体的な装飾を施す「ゴブレット」を得意とする。 |
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Webサイト | http://www.sorteglass.com/ |
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應需細工所 石井 雄次さん
築200年の古民家に、ジュエリーのオーダーメードやリフォームの工房を構えています。大阪・豊中から移り住みました。インターネットがあるので、都会にいなくても材料はそろいます。
この建物が好きなんです。入口の引き戸を開けると店舗兼工房があって、奥の住居との間に小さな中庭。住みながら仕事をしたいと思い、5、6年かかって探しました。
一から十まで手作業の世界。一つの仕事に何カ月もかかる。うまくいかず煮詰まってしまうこともあります。そんなときは、ほかの職人と話をしたり、お酒を飲んだりする。篠山は、なぜかいろんな職人が集まってきますね。冬の寒さはつらいが、面白いまちだと思います。
団体概要 |
おうじゅさいくしょ 神戸のジュエリー会社などを経て独立。微細な歯車を組み込んだ「ギミックジュエリー」を手掛ける。 |
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Webサイト | http://j-eauge.jugem.jp/ |
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いわや 岩本 和也さん
37年前、山登りが好きだった土建業の親父が、山と谷に挟まれたこの地に古民家を模した料理店を開いた。自分が店を継ぎ、近くの田で育てたコメを出している。
イノシシの肉の仕入れは必ず自分でやる。植物性のエサで育った肉は、脂身のおいしさが違う。毛並みを見ればどの山で育ったか、肉を見ればどんなエサを食べてきたかわかる。一番いい肉を仕入れる自信がある。
周りの畑で収穫した野菜の天ぷらも人気だ。材料費はただじゃないかと冷やかされるが、都会では味わえない最高のぜいたくだから売れるのではないか。
篠山には、料理人がうらやむようないい素材がそろっている。これを生かした食文化を、継承していかなければならないと思っている。
団体概要 |
いわや かやぶき屋根に、いろりを切った座敷が特色。米や野菜は近くの田畑で自家栽培し、自家製のどぶろくも出す。 |
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Webサイト | http://www.iwaya-yosaku.com/ |
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小田垣商店 小田垣 昇さん
黒豆の中でも、つやが良く大粒の高級品が「丹波黒」。粘土質の土壌で寒暖差が大きいという、篠山独自の気候風土が育みました。通常の大豆より生育日数が長く、農家にとってはほかの大豆より手間ひまがかかります。
集荷した丹波黒はひと粒ひと粒、人の手で選別し冷蔵倉庫で保管します。不作の年でも安定供給し、需要を落とさないためです。
海外では和食が注目される一方、国内では黒豆が欠かせないおせち料理を自分で作る人が減るなど、食文化が変容しています。
需要が伸びないと生産者が安心して作れない。篠山の和菓子店と連携した商品も作りました。地域を活性化し、丹波黒を作り続けてもらうため、これからも魅力を発信します。
団体概要 |
おだがきしょうてん 創業約300年の黒豆卸店。一部の農家が育てていた丹波黒を、明治期に種子を配るなどして徐々に広めた。 |
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Webサイト | https://www.odagaki.co.jp/ |
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山城下町ホテルNIPPONIA 藤原 岳史さん
江戸時代に建てられた篠山の中心地の古民家4棟を、計10室の宿泊施設に改装して10月に開業します。
買い物や食事は、周辺の店舗を使ってもらいます。まち全体をいわば一つのホテルに見立てて、篠山の歴史的な景観や食文化を楽しんでいただきます。
古民家は権利関係や所有者の思いが1軒1軒異なる。ていねいにお話を聞きながら、専門業者や金融機関とも協力して再生のスキームを練っています。
大半のホテルは食事や買い物の需要も取り込んでしまい、周辺の店が滅びる。このホテルは、まち全体が活気づくのを目的にしています。同じようなホテルを「NIPPONIA」ブランドで各地に展開して、地域再生につなげたいですね。
団体概要 |
ささやまじょうかまちほてる にっぽにあ 政府の国家戦略特区に基づく規制緩和により実現。10月3日オープン。数年後に10棟・30室を目指す。 |
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Webサイト | http://sasayamastay.jp/about/index.html |
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