Mラボ -地域企業と大学生のマッチングラボラトリー-
課題解決ラボ2022

審査結果

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総評

  • 審査委員長

    神戸大学大学院経営学研究科 教授

    南 知惠子

    審査委員長コメント

     今回の課題解決ラボは、マッチングした企業の課題のみに焦点を当てるのではなく、テーマ自体を「経営課題」と「社会課題」との両立という高度な課題への取り組みをしてもらいました。難しい課題ではあったと思いますが、よく考えて課題設定していたチームも少なからずありました。一方でマッチングした企業から提案された課題、つまりその企業の直面している課題に限定して取り組んだチームには審査上の評価が少し辛くなっています。

     全体の印象として、課題から解決まで動画で表現する構成は各チームともよく出来ています。またプレゼンの口頭での表現力も甲乙つけがたい完成度でした。しかし、スライドが別に配布されるからといって、動画自体のスライドが見えにくい場合は視聴する側には伝わりにくいので、プレゼンテーション動画をどう表現するかについては再考を要するチームも少なからずありました。

     1点厳しく評価したいのは、情報収集力に関してです。どのチームもマッチング企業にヒアリングをしたり、チームで考えたことのエビデンスになるようなアンケート調査を実施しています。そのことは決して悪くはありませんが、アンケート調査で記述統計(何パーセントの回答があった等)はそれだけでは何かを証明することにはなりません。そもそも調査対象が限定されていますし、誰を対象とするかでサンプリングのバイアスがあります。アンケート項目を変数化し、統計解析をすることで仮説の検定を行うことができます。これまでのMラボ課題解決ラボではこうした解析に取り組んだチームが多かったのですが、今回解析による検定で仮説を証明しようとするチームが見当たらなかったことは残念でした。これを機に勉強してほしいと思います。

     今回、企業のみならず、どのような社会に私たちが向かっていっているのか考え、問題を考えたことが皆さんにとって有意義な経験となることを切に願っています。

審査結果

グランプリ

関西学院大学・西本ゼミ
(研究企業:石光商事)

研究テーマ

気持ち挽き出す、コーヒーで

音楽と共に提供、メンタル改善

石光商事から「消費者向けのコーヒー訴求を通じて社会課題を解決する新たなビジネスを展開したい」との課題をもらった。数ある社会課題の中で「若者のメンタルヘルス」に焦点を当てることにした。なぜならZ世代の若者は、それ以前のミレニアル世代よりもストレスフルと自覚しているからだ。Z世代は音楽などのコンテンツを消費することでストレスを軽減していることが分かった。メンタルヘルスに好影響を及ぼすコーヒーを、そこに介在させることができないかと考えた。
そこで提案したいのが「Play&drip coffee」だ。商品は、心を落ち着かせたい時に、まろやかな味わいのコーヒーと「励まし、承認」をテーマにした曲とを組み合わせた「STAY」と、気持ちを前向きにさせたい時に、きりっとした味わいのコーヒーと「応援、元気」をテーマにした曲とを組み合わせた「PUSH」の二つを提供する。1箱に3パック入りで、NFC(近距離無線通信)を使って1パックごとにスマホにかざすと曲が聴けるようにする。
使用する際には、豆の味をなりたい「感情」で購入し、コーヒーを飲みながら曲を再生することで、自分自身と向き合う時間をつくることができる。商品を販売する場所としては、「偶然の出会い」「癒し」「新しい価値観発掘」を求めて来店する傾向のある書店が適切だと考えた。「Play&drip coffee」を社会に届け、Z世代のメンタルヘルス不調を改善したい。

ユニークな発想で社会貢献へ
石光商事株式会社 代表取締役社長 石脇智広氏の話

関西学院大学西本ゼミの皆さま、グランプリ受賞おめでとうございます。各チームのプレゼンはいずれも大変素晴らしいものでしたが、その中でひときわ輝く興味深い内容であったと思います。「消費者とともにどう商品を育てていくか?」。この課題に対して、私に皆さんのような答えはありませんでした。いい勉強をさせていただいたと思います。ありがとうございました。皆さまのユニークな発想がこの先の社会をより良いものに変えてくれるものと期待しています。

生活課題や消費スタイル探究
西本ゼミリーダー・中井 寛さんの話

コーヒー事業において長い歴史を持つ石光商事様が掲げる「一杯の幸せ」という価値観を元に、私たちならではの新しい視点でその価値を伝えていきたいという想いから、今回の施策を提案致しました。また、今回のターゲットは私たちと同じZ世代であるため、私たち自身が「提案に魅力を感じるか」という問いを常に意識して、生活課題や消費スタイルについて探究しました。試行錯誤を繰り返していく過程で、様々な学びを得ることができ、非常に良い機会となりました。

準グランプリ

甲南大学・西村ゼミ
(研究企業:生活協同組合コープこうべ)

研究テーマ

~みんなの文化祭~ 高校生・大学生の力で地域コミュニティ創生へ

自分らしさ発揮し交流も

コープこうべから「高校生・大学生が地域で輝き、地域コミュニティが活性化する施策の提案を」と要望があった。今後、組合員数を増やしていくためにも高校生・大学生とかかわりを持つことが重要だ。高校1年生~大学1年生に、これまで地域活動に参加した経験を質問したところ「1~3回」が7割を占め、参加回数が少ないことがわかった。
参加の妨げとなる要因として「時間がない」「情報がない」「一緒に参加する人がいない」という問題が顕在化し、この解決が必要だと分かった。文献調査から、コミュニティに加わるには「興味・関心」に加え、趣味、思考などが他者に似ている「類似性」が必要であることが分かり、この潜在的な問題の解決には、自分らしさと他者との共通点を見出すことが重要だと考えた。
コープこうべでは、すでに若者の地域活動を応援するポータルサイト「コノユビ」があり、これを入り口に「みんなの文化祭」を提案したい。出店(販売)、出演(イベント)、運営で関わることができるので、地域活動より参加のハードルは低い。また、参加することで、自分らしさを安心して発揮できるだけでなく、地域の人たちとの交流が生まれ、地域に関わっていきたいという思いも生まれる。情報不足については、高校生・大学生の広報チームによる「自分のしたいこと探し」をテーマにした高校、大学への出前授業で解決を図る。

3位

関西学院大学・安ゼミ
(研究企業:日本テクノロジーソリューション)

研究テーマ

世界をまるっとシュリンク包装~ラベルの新たな未来~

訪日外国人にオリジナル徳利を

日本テクノロジーソリューションは、容器にフィルムを熱旋風で密着させるシュリンク包装を手がけ、「魅せるラベル」で付加価値をつけている。ただ、一般消費者へのアピールが弱く、ラベルの需要減少という課題にも直面している。
そこで提案したいのが、訪日外国人にたった一つの日本酒入りのオリジナル徳利を提供する「日本酒LINK」だ。日本酒を選んだ理由としては、「兵庫県の日本酒生産量が日本一でありながら知られていないこと」「世界の酒類市場における日本酒のシェアは1%未満で成長する余地が大きいこと」、そして「すでに同社が日本酒の商品企画から販売までを行う新事業を行っていること」の三つが挙げられる。
オンラインで注文できるようにし、徳利の大きさは180ml、350ml、500mlから選べる。ラベルは日本で撮影した写真に名前やメッセージなども加えることができ、QRコードを生成する。受け取り場所は酒蔵や空港などから選択できるようにし、そこで試飲した上で好みの日本酒を詰め、シュリンク機にQRコードをかざすとオリジナル徳利が完成する仕組み。訪日外国人に日本酒LINKを使ってみたいかどうかを尋ねたところ65%が「YES」と回答した。ラベルの需要減少、一般消費者へのアプローチという企業の課題だけでなく、使い捨てをさせないことでラベルの廃棄量削減、酒蔵観光の促進、伝統産業の保全という社会課題の解決にもつながる。

審査員特別賞

関西大学・西岡ゼミ
(研究企業:石光商事)

研究テーマ

コーヒーを知るスタートラインへ~一杯のコーヒーが創る新しい世界~

18歳女子照準、学食での焙煎体験提案

OEM(相手先ブランドによる生産)商品の受託製造が多く、自社ブランドの認知が低いこと、社会課題解決のための取り組みが消費者に伝わっていないことの二つが石光商事の課題と考えた。これを踏まえ、コーヒーの飲まず嫌いの消費者を減らすアプローチを探った。
若い世代ほどコーヒーに魅力を感じておらず、20代ではその数がほぼ半数に達した。そこで10~20代の若者をターゲットに定めた。コーヒーに対しては「オシャレ」「集中力が高まる」などのポジティブなイメージがある一方で、「苦い」「カフェインの中毒性」といったネガティブなイメージもある。そこで、「コーヒーに対してポジティブか、ネガティブか」を縦軸に、「日常的に飲むか、飲まないか」を横軸に取り、4象限でペルソナをイメージし、その仮説が正しいかどうかを検証した。その上で、新しいものを取り入れることに積極的な、ポジティブだが飲まない「カフェラテ系18歳女子」をターゲットに定め、自分で選んだ豆で焙煎体験ができる「石光焙煎工房」を提案する。
提供場所は大学の食堂で、「テストを頑張りたい君へ」「コーヒー初挑戦の君へ」などオリジナルネーミングのコーヒー豆を用意し、セルフ焙煎機を設置。価格は1杯50円~100円とする。併せて石光商事の社会貢献活動を知ってもらう場とし、学生の社会学習につなげる。これによって冒頭に挙げた二つの課題の解決につながる。

審査委員プロフィール

  • 審査委員長

    神戸大学大学院経営学研究科 教授

    南 知惠子

    神戸大学文学部を卒業後、ミシガン州立大学にて修士号、神戸大学にて博士号(商学)を取得。横浜市立大学商学部助教授を経て、2004年より現職。神戸大学キャリアセンター長、学長補佐(キャリア支援担当)を経て、2020年から2021年度まで、神戸大学学域長、経営学研究科長、経営学部長を兼務。2022年4月よりDX・リカレント教育担当学長補佐を兼務。同年6月より現代経営学研究所理事長兼務。専門は流通・マーケティング論。兵庫県、神戸市等の審議会委員、日本生産性本部顧客満足度指数開発顧問等を歴任。サービス開発に関する企業との共同研究多数。主要著書は、『サービス・イノベーション-価値共創と新技術導入-』(有斐閣、2014年、西岡健一との共著)、『製造業のサービス化戦略』(中央経済社、西岡健一との共著)など。

  • 審査委員

    流通科学大学商学部 教授

    清水 信年

    神戸大学経営学部卒業、同大学院経営学研究科博士課程修了、博士(商学)。奈良大学社会学部専任講師、流通科学大学商学部専任講師・准教授を経て2011年から現職、2020年から副学長を務める。専門はマーケティング論、製品開発論、リテール・マネジメント論。

  • 審査委員

    株式会社日本政策金融公庫 神戸支店 中小企業事業 副事業統轄

    小谷 健太郎

    1997年中小企業金融公庫(現・日本政策金融公庫)入庫。2006年日本生産性本部出向。静岡支店、金沢支店等にて中小企業向け融資業務に従事。2011年大阪支店融資課長、2015年人事部人財育成課長、2017年広報部報道課長。2020年7月から神戸支店中小企業事業総括課長、2022年3月から同店副事業統轄。神戸大学大学院経営学研究科卒(MBA)、中小企業診断士、日本生産性本部認定コンサルタント。

  • 審査委員

    有限会社未来教育設計 代表

    吉住 裕子

    (株)住友銀行、(株)JDL等に勤務したのち、1999年に独立し、2005年に(有)未来教育設計を設立。
    事業者・団体の新規事業立ち上げを、戦略立案・資金調達・人財育成面から支援し、その挑戦と進化を応援する中小企業診断士。にしのみや起業家支援センターの起ち上げを手伝い、本年度オープン。西宮商工会議所の強みを活かしつつ地域特性に合致した支援センターづくりに協力中。
    1級販売士。ITコーディネーター。農林水産省GIマーク(地理的表示)保護制度アドバイザー。

  • 審査委員

    神戸大学大学院経営学研究科 准教授

    森村 文一

    神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(商学)。京都産業大学経営学部助教を経て、2014年より現職。専門はマーケティング論、消費者行動論。主に消費者のイノベーションや環境配慮型製品の採用プロセス、企業の技術導入・活用プロセスについて研究を行ない、製造企業および小売企業のマーケティング戦略立案や技術ベースのサービス開発の支援に携わる。