地域企業と大学生の就職マッチングを様々な事業を通して行う『Mラボ』の中核事業『課題解決ラボ』(兵庫県、神戸新聞社主催)の公開プレゼン大会を、10月27日(土)、神戸ハーバーランドにて開催しました。
『課題解決ラボ』は、新商品開発やマーケティング戦略など地域企業が抱える様々な経営課題を、大学生がゼミの専門性をいかし、学生の視点で解決を目指す事業です。
製造業、サービス業など兵庫県内10企業から出された課題について、調査・研究を進めてきた20チーム(11大学、20ゼミ、約250名の学生)が研究成果を発表し、優秀チームを表彰しました。
甲南女子大学人間科学部・佐伯ゼミ(研究企業:TAT)
「ネイル業界が農家の指先を救う!?」
爪の間の土汚れ防除に着目
ネイル産業市場の成長率は2013~2015年で年平均1.5%と停滞気味であり、新規事業の創出が求められている。TATの「世の中に新しい価値と文化を創造」という経営理念に沿って、私たちが着目したのが農業市場だ。農家を訪ね、悩みを聞き出した中で、特に女性で「爪と指の間に土が入る」ことで「汚い手で子どもに触れたくない」「汚れが恥ずかしい」という悩みを抱えている問題に着目。これを解決するために「土が入る前にすき間を埋める」商品の開発を提案した。爪への埋めやすさ、はがしやすさを重視し、既存の商品を使って実験したところ液体ばんそうこうが一番適していることが分かった。さらに、農家に実際にヒアリングしたところ、その日によって作業が異なる多品種栽培農家は「はがしやすい」、また同じ作業が続く単品種栽培農家は「はがれにくい」商品を求めていることが分かった。JAの担当者から「農家は口コミで広がりやすい」というアドバイスを受け、お試しも兼ねた即売会形式で広げる方法を提案。また、農林水産省が推進する農業女子プロジェクトの担当者からも好意的な反応が得られた。また、農業以外に趣味人口の多いガーデニング市場に広げれば、ビジネス機会が見込めると考えている
ぜひ提案を商品に
株式会社TAT代表取締役社長・高野芳樹氏の話
農業とネイルを結び付けること自体、私たちでは全く思いつかなかった発想で非常に驚かされた。農業の現場や関係者に深く入り込んで調べる行動力にも頭が下がる思いだ。農業従事者の1割でも商品を買ってくれればかなりのマーケットになる。ぜひ提案を基に商品化まで結び付けていきたい。
素直な思い基に課題設定
ゼミ代表・森麻里奈さん(4回生)の話
去年3回生で参加したのだが、自分の思っていたことができないまま入賞を逃した。今年こそは、とリベンジの思いで臨んだ。去年、ゼミのフィールドワークで多可町の農家を訪ねた時に感じた素直な思いを基に課題を設定した。テーマが唐突な印象を与えるので、どうすれば聞く人に伝わるかプレゼン内容も吟味した。
甲南大学経営学部・西村ゼミ(研究企業:富永貿易)
「たった一杯で胸いっぱい~新規顧客の獲得に向けて~」
若者照準ギフトセット考案
富永貿易が総代理店として輸入し、数多くのフレーバーティーを展開する英国の紅茶ブランド「アーマッドティー」の新規顧客として18~22歳の男女をターゲットに設定した。調査の結果、知名度はほとんどなく、認知度アップのための接点づくりが必要と考えた。そこで英国では歴史的に紅茶がコミュニケーションのツールとして使われ、前頭葉を刺激する作用があることをふまえたギフト商品を提案。娘が親に伝えたい思いに合わせて、安眠、美肌、ストレス軽減など商品ごとに特有の効能を持つフレーバーを簡単に選べるチャートを作成した。4個のティーバッグとメッセージ、抽出時間を計る砂時計をセットにして324円で販売する。「親子の絆をつなぐ」プチギフトだ。
関西学院大学商学部・川端ゼミ(研究企業:ウィル)
「あなたの住まい探し、まずはウィルから。」
安心、納得の「人」PR
ウィルの特徴は「顧客の気持ちを深く理解し、思ってもみなかった提案を行う営業力」で、それを実現できる「人」が強みだ。ただ、人の魅力はお店に来てもらわないと伝わらない。そこで「ウィルと顧客の出会いをつくる」ことを課題に据えた。インタビューなどの結果、不動産探しは広さやエリアありきでネットを活用しているケースが大半で、どこかで妥協している現実が浮かび上がった。そこで「物件ありき」ではなく「人」から始める住まい探しを提案。家族構成、営業体験談といった属性を踏まえ相性のいい営業担当者を選べるパートナー制度を設け、店に気軽に入れるようカフェを併設する。会社のホームページも営業担当者の人物紹介に重点を置く。
関西大学商学部荒木ゼミ(研究企業:エム・シーシー食品)
「家族をつなぎ、紡ぐMCC」
多世代の興味誘う企画立案
「商品をいろんな世代の人に食べてもらいたい!」というエム・シーシー食品からの要望をふまえ、二つのサービスを提案する。まず「はぴデリ」。目利きのプロが、顧客の家族構成や好みをふまえ、必要な栄養素を考えて一人ひとりに合わせたレトルト食品をレシピとともに届けるサービスだ。買い物が大変な親、妊娠中の娘などを思って贈る販売戦略を考えた。二つ目が「食のテキスト」。各商品の「歴史、文化、環境」「品種、栽培法」「出荷法」「調理法」「栄養価・食べ方」を伝える冊子だ。学校に配布すれば子どもたちの食育に貢献し、保護者に商品の認知を広げることになる。避難訓練時に商品とともに配布すれば非常食としての新たな魅力を伝えることもできる。
審査委員長 |
神戸大学大学院経営学研究科 教授 南 知惠子 |
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神戸大学文学部を卒業後、ミシガン州立大学にて修士号、神戸大学にて博士号(商学)を取得。横浜市立大学商学部助教授を経て、2004年より現職。2018年より、神戸大学キャリアセンター長を兼務。専門は流通・マーケティング論。兵庫県、神戸市等の審議会委員、日本生産性本部顧客満足度指数開発顧問等を歴任。サービス開発に関する企業との共同研究多数。主要著書は「リレーションシップ・マーケティング」(千倉書房、2005年)、「顧客リレーションシップ戦略」(有斐閣、2006年)『サービス・イノベーション-価値共創と新技術導入-』(有斐閣、2014年、西岡健一との共著)、『製造業のサービス化戦略』(中央経済社、西岡健一との共著)など。 |
審査委員 |
流通科学大学商学部 教授 清水 信年 |
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神戸大学経営学部卒業、同大学院経営学研究科博士課程修了、博士(商学)。奈良大学社会学部専任講師、流通科学大学商学部専任講師・准教授を経て2011年より現職。同年から、小売業での人材育成を目的として新設された商学部リテールマネジメントコース長を務め、現在は大学院流通科学研究科長。専門はマーケティング論、製品開発論、リテール・マネジメント論。 |
審査委員 |
シナジーマーケティング株式会社 代表取締役社長 田代 正雄 |
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1995年関西学院大学卒業後、コスモ石油株式会社に入社。2001年にシナジーマーケティングの前身となるインデックスデジタル株式会社に入社、2004年より取締役営業部長を務める。2011年、取締役兼COOに就任。2017年2月より現職。2010年の米セールスフォース・ドットコムとの資本業務提携、2014年のYahoo! JAPANグループ入り(100%子会社)を推進。 |
審査委員 |
パナソニック株式会社 アプライアンス社 深田 昌則 |
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1989年、松下電器産業(現パナソニック)入社後、米国松下電器およびカナダ松下電器に赴任。帰国後、欧米コンシューマー市場向け国際営業を担当。その後、海外宣伝課にて、LUMIX、DVDレコーダーのグローバルキャンペーンや、スポーツマーケティング室にて、五輪大会の技術マーケティング戦略を担当。2010年パナソニックカナダ、2015年アプライアンス社海外マーケティング本部新規事業開発室長。2016年、デジタル変革時代のイノベーションを加速する社内アクセラレーター「ゲームチェンジャー・カタパルト」を立ち上げ、代表に就任。組織や働き方の枠組みを超え、新しい技術や発想で「くらしの願いをカタチにする」ことを目指している。神戸大学大学院経営学研究科卒(MBA)。 |
審査委員 |
シオノギデジタルサイエンス株式会社 代表取締役社長 丸山 秀喜 |
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1992年、塩野義製薬株式会社入社。医薬営業本部神戸営業所長などを経て、2013年より、経営企画部にて現行中期経営計画の立案と推進、海外子会社を巻き込んだグローバルプロジェクトのマネジメント、グループ全体の組織構造改革のプロジェクトマネジメントに従事。2017年より、塩野義製薬の創薬ビジネスのデジタル化・IT化を推進するために設立された子会社・シオノギデジタルサイエンスの代表取締役社長に就任。神戸大学MBAシニアフェロー。 |
審査委員 |
西日本旅客鉄道株式会社 創造本部 水田 整 |
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JR西日本入社以来、一貫して関連事業に携わり、ショッピングセンター事業、駅および周辺の開発計画企画、線区価値向上などの業務を経て、2013年、新規事業を所管するビジネスプロデュースグループを立ち上げる。M&A、合弁会社設立、業務提携など様々な手法を駆使し、観光、一次産業、介護、ホテルなど多様な領域で雇用や定住を生み出し、地域活性化につながる事業を展開中。 |
審査委員 |
未来教育設計 代表取締役(Mラボ課題解決ラボ実行委員) 吉住 裕子 |
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(株)住友銀行、(株)JDL、三喜産業(株)等に勤務したのち、1999年に独立し、2005年に(有)未来教育設計を設立。事業者・団体の新規事業立ち上げを、戦略立案・資金調達・人財育成面から支援し、その挑戦と進化を応援する中小企業診断士。また、地理的表示保護制度の近畿ブロック統括アドバイザーとして、地域の伝統的な産品を知的財産化してさらに価値を高める方策を伝えるなど、新しい観点からの地域づくりを支援中。 |